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安倍元首相の「国葬」について

安倍元首相の「国葬」の閣議決定撤回と中止を強く求める

                       2022年8月10日
               名古屋市職員労働組合 中央委員会

 7月22日、政府は、安倍元首相の「国葬」を9月27日に東京・日本武道館で行うことを閣議決定しました。銃撃され不慮の死を遂げた安倍元首相を追悼する思いを多くの国民が持つ一方、「国葬」の実施については疑問を持つ声が広がっています。「国葬」の費用が全額国費(税金)で賄われることも問題ですが、そもそも法的根拠のない「国葬」を国会での議論も行わず閣議決定によって決めること自体、民主主義に反するものと言わざるを得ません。
 岸田首相は、安倍氏が歴代最長の通算8年8ヶ月の間、首相を務めたことなどを「国葬」実施の理由としています。しかし安倍政権は、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行い、安保法制=「戦争法」の成立を強行し、新自由主義的な経済政策である「アベノミクス」により、貧困と格差の拡大を深刻化させました。一方、森友・加計学園問題や「桜を見る会」などにみられるように安倍氏が権力の私物化をすすめ、国会の議論を軽視した結果、政治の劣化がすすんだことも看過ごせません。
 そもそも「国葬令」は、国民主権、政教分離、法の下での平等、思想・信条の自由を保障する日本国憲法の制定を機に、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」第1条の規定により失効しました。したがって、「国葬」が実施される法的根拠はどこにもありません。
 仮に「国葬」が行われれば、地方自治体に半旗掲揚等が強制され、住民や職員には弔意を押しつけられることは、2020年10月17日に実施された「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀の事例からも想定できます。憲法第19 条の思想・信条の自由の保障に抵触し、個人の内心を統制するとともに、「地方自治の本旨」に反して国家権力が地方自治に不当に介入することとなり、民主主義を蹂躙する極めて重大な問題であると考えます。
 私たち自治体に働く労働者は、戦前「天皇の官吏」として「赤紙」を配布し国民を戦争へ駆り立て、侵略戦争のために働かされた歴史をもっています。その悲痛な経験を踏まえ、現行憲法のもと、「国民全体の奉仕者」として日々の業務に奮闘しています。安倍元首相の「国葬」は、国民の分断と対立を深め、自治体労働者の誇りと願いを歪めることに他なりません。
 改めて、安倍元首相の「国葬」の閣議決定撤回と中止を強く求めます。

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