特集

主張

職場と法律(5) 母子生活支援施設

母子の人権と五条荘

   私は五条荘で働いています。母子生活支援施設です。
 五条荘を利用されている方は、DV被害を受けて逃げていらした方、精神疾患を抱えておられる方、外国籍の方など、多様な困難を抱え、懸命に生きていらっしゃる方たちです。私たちの仕事はさまざまで、法律相談や、通院、警察、役所、裁判所、住宅の下見や契約にも付き添い、保育所を探し、学童保育もします。

 いま、母子を取り巻く状況は深刻です。五条荘は常に満室に近い状態で運営し、かつ年間を通して100を超える入所依頼があります。公営住宅の倍率は高くなり、住む場所の確保も大変です。不況の影響で求職活動は困難を極め、小さい子どもがいることで採用してもらえなかったり、やっと仕事をみつけてもすぐに首を切られてしまいます。

 そんな中で、五条荘は指定管理者制度が導入されます。利用者は反対運動をし、市議会で「導入中止を求める請願書」が出されましたが黙殺。導入が決まった後で行われた利用者説明会では切実な声があげました。今のままの五条荘を守りたい。職員が全く入れ替わっては信頼関係を引き継げない。五条荘を知らない選定委員が判断できるのか。結局上から押し付けてくる。力にモノを言わせる世界ではないか…など。

 DV被害から逃げてこられた方の中には住民票を移動できない方もみえます。基本的人権である「参政権」が行使できません。こういう方々がやっと身を落ち着けた母子生活支援施設です。それを名古屋市はDV加害者のように施設の管理運営の変更を一方的に押し付ける。まさに行政による二次被害だと思います。

 母子の生活の拠点である入所型の児童福祉施設(児童福祉法第38条)で、強引に運営形態の変更を推し進めることは福祉の理念に反しています。利用者の不安に配慮するためとして引き継ぎ予算を21年度に1400万円も計上していますが、引き継ぎ方法などは利用者にも職員にも語られることなく決定後の説明で年度途中からかえって不安をあおるものになってしまいます。
 暴力的なやり方には屈せず、利用者の皆さんの気持ちを伝えていきたいと思います。

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